意味怖

幸福な未来

投稿日:2016-05-19 更新日:

妻は上機嫌だった。

同窓会が楽しかったのだろう。

普段、あまり酒を飲まない彼女が、今夜は頬を赤く染めて饒舌だ。

「結子の旦那はお医者様で、美佐江の旦那は社長さんなんだってさ。すっかり自慢されちゃった」

「すまないねー。しがないサラリーマンで」

僕は浄水器から水を注ぐと、コップを彼女の前に置いた。

「だいたいさ。そんなこと言うなら、なんで涼子は僕を選んだの?」

1年前の僕には何人かのライバルが居たはずだ。

いま口にすると只のオノロケになってしまうが、妻はすごく美人だ。

ライバルの中には、同窓会で友人に自慢できるような職種の人間も含まれていたと思う。

「勿論、幸せのためよ。私自身が幸せになるため」

「うーん」

僕は首を傾げた。

「納得できない?」

「嬉しいんだけど、僕が知りたいのは『理由』だよ。なんで僕と結婚して幸せになれると思ったのか?ってところ」

「……えっとねー」

彼女はそう言うと、僕の置いたコップを手の甲で押しのけ、ワインの入ったグラスを口元に運んだ。

「実はね。ホントは秘密なんだけど、私の家系って未来が少しだけ見えるのよ」

「未来が見える?」

「そう。予知ってヤツ」

「……ふーん。じゃあ、僕と結婚する未来が一番だった訳?」

「そうよ。そうなの」

「そーかー、そーですかー」

僕の棒読み口調に、彼女は少しむくれたような表情になった。

「何、感じ悪い。信じてないでしょー」

「そりゃねー。予知なんて言われても、証拠でもないとさ」

「えー、うーんとねー…」

彼女は暫く考えてから、言葉を続けた。

「……明日、晴れるよ」

「さっきテレビで見たよ」

「えー、うーん。証拠かー、証拠ねー」

彼女は腕組をして、目を瞑ってしまった。

置き時計を見ると24時を少し回っている。

僕は「先、風呂入るよ」と言って、再度コップを彼女の前に押し戻した。

彼女は目を閉じたまま「うん」と言って頷いた。

30分ほど経ってリビングに戻ると、彼女はソファーに移動して眠っていた。

「寝ちゃったか」

テーブルの上を見ると、コップが倒れていた。

急いで拭いたが、リモコンや置いてあった書類まで濡れている。

「あーあ、もー」

そう呟いて書類を摘み上げると、それは保険の契約書だった。

満了の日付は、滲んでしまい読むことができなかった。

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  2. 除霊
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  4. ショートケーキ問題
  5. 夢オチ
  6. 彼女は私を見下し続ける
  7. go home
  8. ノート
  9. 僕は交通ルールにうるさい
  10. 僕らの成功法則
  11. 付きまとわれてて
  12. 事故物件
  13. 同棲生活
  14. 懇願
  15. わら人形
  16. 占い師
  17. 最後の一葉
  18. 魔法の香水
  19. キツネ様
  20. 青ざめる

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