意味怖

暗号解読

投稿日:

私は白髪混じりの頭をポリポリと掻いた。

 

うーん……

さっぱり分からない。

 

明かりを消した会議室の中、

前面に備え付けられた大型のスクリーンに、

プロジェクターが青白い光を照射している。

 

写しだされているのは、

意味の分からない文字列。

 

……暗号文というやつだ。

 

「矢上くんの残したダイイングメッセージを無駄にしてはならないッ!」

署内で一番大きな会議室を埋める50人近い刑事に向かって、

真鍋警視正は声を荒げた。

 

昨晩発見された遺体ーー矢上妙子は、小さく折りたたんだレシートを手の内に握っていた。

その裏面に書き記されていたのが、この暗号文だった。

 

「……上の方々はご立腹ですね」

隣に座った山崎が声を落として言う。

私は肩をすくめた。

「まあ、あれだけマスコミに叩かれているんだ仕方がないだろうな」

 

この半年のうちに発見された遺体の数は、

3体。

被害者は全員警察関係者で、

使われた凶器もすべて同じ、

警察に憎悪を持つ同一犯による連続殺人ーー

そう考えるのが自然な見解だ。

 

遅々として進まない捜査状況に加えて、

被害者が身内であることも拍車をかけ、

新聞もニュースも連日、警察の無能を報じていた。

 

「うちらに八つ当たりされても困りますけどね」

山崎がぼそりと呟くと、部屋の明かりが点いた。

プロジェクターも止めるよう若い署員にあごで指示をすると、

真鍋警視正は仰々しく立ち上がった。

 

「それじゃ、誰か暗号の意味が分かった者はいるか?」

彼が視線を我々に向かって投げたので、

私はあわてて視線を手帳に落とした。

自然、先ほど書き写した暗号文を見つめることになったが、ため息が漏れるだけだった。

……全く分からない。

他の署員たちも大差ないようで、

警視正の問いに答えるものは、誰もいなかった。

みな一様に首を傾げ、腕を組み考え込んでいる。

 

これがダイイングメッセージである以上、

指し示しているのは犯人の名前か、その特徴であるはずだ。

しかし、

どう考えればいいのだろうか?

 

私は暗号を考えた被害者の経歴を思い浮かべた。

矢上妙子、28歳、独身、入庁は6年前。

階級は警視。キャリア組の才女。FBIでプロファイリング技術を習得、と。

関係ないか……。

うーん……。

暗号文の数字を50音に変換して、

もしくはイロハ歌に置き換えて……違うか。

漢字を平仮名に変換して、それからローマ字に変換……ダメか……。

じゃあ、手帳を横にして……逆さから見ると、

……別に読めるようにはならないな。

 

「先輩、何か分かりましたか?」

頬杖をついた私に山崎が言う。

私は小さく首を横に振った。

「とっかかりすら掴めん。逆からも考えてみたが、皆目検討がつかないな。どうやって考えたらいいんだろうな?」

「僕はピーンと来ましたよ。きっと住所か緯度経度とかが関係あるんじゃないかって思うんですよね」

山崎はそう言うと、手帳に描いた雑な日本地図を私に見せた。

しっくりくる意見とは思えなかった。

「どうだろうなぁ……」

曖昧に答えて、腕を組むと、

私はぼんやりとした視線を手帳の上の暗号文に戻した。

 

『43a94ga25uhga3』

 

うーん……

さっぱり分からない。

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