意味怖

点線

投稿日:

夏休みもまだ半分残っているのに、

私は教室に立っていた。

一人だけ、他には誰も居ない。

あー、セミがうるさい。

 

何の気なしに足元を見ると、

床に点線が引かれていた。

 

もちろん普段はない、こんなの。

線は私の足元から廊下に向かって伸びている。

半開きになっていた教室のドアを開けると、ムワッとした熱気が身体を包んだ。

あっつぃ。

白いシャツの胸元に指を掛け、パタパタと風を送る。

 

外は晴天。雲ひとつない。

窓から射す日差しが嘘みたいにまぶしかった。

線は廊下の奥へと続いていた。

 

「どこに向かっているんだろう?」

小首を傾げると、私は点線を辿ることにした。

 

下を向いて、線と平行に歩く。

小学生の行進みたいに、大きく両手を振って歩いた。

階段の踊り場まで行くと、線は階下に向かって伸びていた。

一段飛ばしで駆け下りる。

スカートがヒラヒラそよいで、気分がいい。

別に登校日じゃないから、

バカな男子も意地悪な先生もいない。

開放感があるってなもんだ。

 

一階に到着。線は渡り廊下を通って、それから体育館の中へと伸びていた。

キュ、キュと無駄に上履きを鳴らして、私は線を追う。

バスケットやらバレーやらのボールを保管している体育館の中の用具室。

線はその中へと伸び、ドアの前で途切れていた。

もちろん、私はドアを開けようと指を掛けた。

でも、ダメだった。

鍵が掛かってる。

用具室の出入り口は一つだけで、このドアが開かないなら、他に中に入る術はない。

 

ここで終着。

この先は辿れない。

ああ、残念。

線の端っこがどうなっているのか、この目で確認したかった。

 

「けどさ、どうせ同じことだよね」

そう声に出すと、

私は半転してドアに背を当てて寄りかかった。

ここで待っていればいい。

口笛なんかを吹いてさ、ただただ待っていればいい。

 

自然と足下に視線が落ちた。

ここまで伸びている点線を見つめる。

 

誰が引いたのか、

私は知っている。

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