意味怖

魔法の香水

投稿日:

トントン、トントン、

昼過ぎにうつらうつらと居眠りをしていた私を起こしたのは、

真鍮のドアノッカーが木製のドアを打ち叩く音でした。

「……郵便屋さんかしら?」

老眼鏡を掛けて玄関ドアを開けると、立っていたのは、

とても美しい女性でした。

私のかわいいかわいい孫娘のミネアです。

「どうしたんだい?ミネア、連絡もせずにこんな森深くの家に訪ねてくるなんて?」

ミネアは口を開くと言いました。

「おばあちゃん、私ね。好きな人ができたの」

暖炉の前に置いた椅子の1つに孫娘を座らせると、私は人肌に温めたミルクを用意しました。

「それで?好きな人ができたとか言っていたけれど……」

私の言葉を受けて、ミネアはポツリポツリと彼のことを話しはじめました。

「とても、優しい人なの。それから、私なんかには釣り合わない身分の人。彼は貴族なの。遠い外国の出身で、貿易の仕事で港街に越してきた。そこで花屋に勤める私と出会ったの」

私は彼女の言葉にウンウンと何度も頷きました。

「それでね。彼……私と結婚したいと言ってくれたの」

「それは良かったわねぇ。でもだったらどうしてお前はそんなに悲しそうな顔をしているんだい?」

俯いていたミネアが顔を上げると、大きな瞳は涙で潤んでいました。

「嘘だった……」

「嘘?」

「うん。私と『結婚したい』なんて嘘だったの。彼はね。……結婚詐欺師だったの」

「そんな……」

「何かと理由を付けては、お金をとられてしまったわ。貴族同士の交際費だとか、お母さんが大病だとかね」

「まあ、許せないわ。憲兵さんに言って、必ず取り返してあげるからね」

私が腕まくりすると、ミネアは首を横に振りました。

「違うの、おばあちゃん。私は彼と言い争うつもりはないの」

ミネアの瞳から大粒の涙がスッと流れ落ちました。

「おばあちゃん、あのね。私に『魔法の香水』を貸してほしいの」

「魔法の香水ですって、そんな。お前、そんな非道いことをされたのに、まだその彼のことを想って……」

「以前に話してくれたわよね。おばあちゃんが今の私くらいの歳の頃、森の妖精から貰った香水のこと」

確かに、この子に話して聞かせたことがある。

村で一番の羊飼いで、ハンサムだったおじいさんのハートを射止めるために、私は魔法の香水を使ったことがあると……。

続きはLINEで

ネットのコピーではない『オリジナルの意味怖』をLINEに掲載しています。

無料です。

追加/削除もご自由にして頂いて大丈夫です。

友だち追加
2857人が追加

LINEで読める意味怖と解説リスト

  1. 幸福な未来
  2. 除霊
  3. 無罪執行
  4. ショートケーキ問題
  5. 夢オチ
  6. 彼女は私を見下し続ける
  7. go home
  8. ノート
  9. 僕は交通ルールにうるさい
  10. 僕らの成功法則
  11. 付きまとわれてて
  12. 事故物件
  13. 同棲生活
  14. 懇願
  15. わら人形
  16. 占い師
  17. 最後の一葉
  18. 魔法の香水
  19. キツネ様
  20. 青ざめる
  21. 仕事
  22. シェアハウス
  23. 清々しい朝
  24. みんな平等に
  25. 平和的な解決

*その後も随時更新中です。

友だち追加
2857人が追加

スポンサーリンク

買いもの記録

人気記事

除霊

恐怖体験というと、 私はあのアパートのことを思い出します。 就職して東京で一人暮 …

関連記事

go home

その日は部下のミスの尻拭いで、遅い退社になった。 電車のシートに座ると、スマホの …

付きまとわれてて[後編]

前回 付きまとわれてて[前編] 今回 「祐美は知ってると思うけど。 駅から家まで …

清々しい朝

朝からとても気分が良い。 アパートのとなりに住む高齢のおじいさんのけたたましい目 …

除霊

恐怖体験というと、 私はあのアパートのことを思い出します。 就職して東京で一人暮 …

最後の一葉

あの日の私は絶望していた。 重い病気にかかっていたのだ。 医者や家族は私が気落ち …

スポンサーリンク

最近の投稿

平和的な解決

「分かってないわね。あなたたちは全く分かってない……」 花純は大きく首を振ってか …

みんな平等に

「明らかに不当です。不平等ですよ。なぜ私じゃなく、あの人が?」 はぁー、 彼女の …

清々しい朝

朝からとても気分が良い。 アパートのとなりに住む高齢のおじいさんのけたたましい目 …

シェアハウス

リビングに広がっていた、 おぞましい光景に私は立ち尽くした。 部屋を充満する強烈 …

仕事

石の上にも三年。 説教くさくて、あんまり好きな言葉じゃない。 それでも本質を突い …

スポンサーリンク

スマホアプリ

全話オリジナルの「意味がわかると怖い話」を載せたアプリをつくりました。赤い方は80話以上の短編を掲載しています。

角川つばさ文庫

「アッと気付くとゾッとする!」
1話1分どんでん返し系ストーリー集です。出版しました。



Kindle本

7話のショートショートを掲載しています。スマホのKindleアプリなどで読むことができます。

プログラミングや意味怖の創作などをしています。 ペンネームは思いつかなかったので、テストでよく見る「”マルマル”を埋めなさい」から取りました。

・角川つばさ文庫「本当はこわい話」出版!
・自作アプリ累計10万インストール突破!
・Kindle本「おしまいおしまいでは終わらない昔話」SF・ホラー・ファンタジー部門1位獲得!(数日間のみ)
・comicoにて85万PV突破!

というのが、優れた実績になります。劣った実績は…

→詳細プロフィールを見る

友だち追加
2857人が追加

→このブログの更新を受け取る方法