「大丈夫です。数ヶ月以内にあなたの弟は意識を取り戻すでしょう」
長い白髪の占い師は、するどい視線を水晶に向けたままでそう言った。
「ほ、本当ですか?」
私の問いに、彼女はゆっくりと深くうなずく。
「そうですか。良かったね。愛梨」
となりに座っていた昌宏が、安堵の息をもらした。
涙がにじんできたが、それをこらえて私は彼に笑顔を向けた。
「うん。ありがとう。あの子助かるんだ。本当に良かった」
***
ワンワンッ、ワンワンッ
「シロ、急に走り出したりしてどうしたのよ?」
弟を見つけたのは、河川敷を散歩していた犬と飼い主の少女だった。
川辺に倒れていた弟は、頭に怪我をしていた。
1ヶ月経ったが、未だに弟は搬入先の病院で眠ったままだ。
警察は弟の交友関係を疑っているようだった。
弟は友人数人に多額の借金があった。
「金銭トラブルが事件の原因かもしれない」
担当刑事からはそう聞かされた。
***
事件以来、疲れ切っていた私を気づかって、昌宏が連れて来てくれたのが、
この高名な占い師の家だった。
彼女は、政治家や大企業の社長も御用達の、『必ず当たる占い師』と言われていた。
「次……僕も占って貰っていいかな?今日は愛梨の弟さんの容態を聞くのが目的だったんだけど……」
「ええ、もちろん。いいわ」
私がうなずくと、昌宏は占い師に言った。
「僕と愛梨……彼女との将来についてお聞きしたいのですが。僕たちは上手く行くでしょうか?その——つまり、結婚とか」
私たちは交際4年になる。
もともとの私たちの予定では今年の末には籍を入れたいと考えていた。ただ弟のことで、彼の両親は結婚に何色を示していた。
「お二人の将来についてですね。わかりました」
占い師はそう言うと、深いシワの刻まれた両の手を水晶にかざした。
「うんうん」
何度かうなずいて見せると、占い師は視線を昌宏に向けた。
「見えました」
ゴクリ、昌宏がつばを飲んだ音が聞こえた。
私も息を飲む。
「問題ない。結ばれますよ。幸せそうな家族の姿が見えました」
彼女の言葉を聞いた瞬間、私は「やった」とつぶやいて、心の中で小さなガッツポーズを作った。
「そうですか。良かった。ホッとしました」
昌宏も私と同じように喜んでくれた。
私たちは満面の笑みを浮かべ、互いの顔を見つめ合った。
「うれしいわ」
「ああ、一緒に幸せになろうな」
良かった。
涙が出るほど嬉しい。
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