意味怖

懇願

投稿日:

廊下の軋む音で、僕は浅い眠りから覚めた。

当然、彼女が帰って来たのだと思った。

僕の居た部屋のドアがゆっくりと開く。

厚いカーテンの締まっていた部屋はとても暗かった。

それでも直ぐに分かった。

直前まで目をつぶっていたから瞳孔が開いていたのだろう。

 

2メートル先に立っていたのは明らかに見知らぬ男だった。

ネルシャツにジーンズ、手に持つ刃物も見えた。

 

総毛立った。

喉がすぼまり息苦しい。

 

……泥棒だ。

 

男は躊躇せずにズカズカと部屋に踏み込み、間近で僕の存在に気付くと驚いて声を上げた。

「何だお前は!?」

それはこちらの台詞だと思ったが、男が手に持った刃物の切っ先をこちらに構えていたので口には出さなかった。

「…た、助けてくれ」

「クソッ。女の一人暮らしだと聞いてたのに、あの野郎」

男は何やら独り言を呟いたが、僕が訴えるべき内容は変わらない。

「一生のお願いだ。何でも持って行っていいから助けてくれ」

「顔を見られちまうなんて…」

「大丈夫。警察には絶対言わないから。助け…」

「うるさいッ。お前を助けても何のメリットもないんだよ」

「それは……今、手持ちは無いが、無事に自分の家に帰れたら金を払うよ。だから頼む。助けて」

男は暫く逡巡してから言った。

「…クソッ、じゃあ鍵を出せよ」

そのとき玄関のドアが開く音がした。

彼女が帰宅したのだ。

「警察を呼んでくれッ」

僕は必死で叫び、泥棒は一目散に走って行った。

直後にリビングの窓が開く音が聞こえたので、男は庭側から逃げて行ったのだと思う。

 

彼女が廊下から僕の部屋を覗き込む。

「何なの?今の?」

「多分、泥棒だと思う」

彼女は「…泥棒か」と呟くと、スーパーのビニール袋を床に置いて、僕の方に近付いて来た。

「怪我とかしなかった?」

「…ああ、何とか。大丈夫だよ」

彼女の顔に安堵が浮かぶ。

「はぁ。なら良かった」

彼女は隙間から手を伸ばすと僕の髪をくしゃくしゃと撫でた。

「本当に良かった。でも泥棒は残念だったでしょうね。この部屋に金目の物なんて無いんだからさ。私の宝物はあなただけよ」

僕は彼女の柔らかな表情を見つめた。

そして考えた。

 

どうだろう?

可能性はどれくらいあるだろうか?

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